空き家の本当の話:数字と隠れたコスト
2023年の住宅・土地統計調査によれば、日本の空き家は約900万戸、住宅総数の14%にあたります。「日本の家が無料でもらえる」という見出しはよく拡散しますが、実態はもう少し複雑です。
900万戸の内訳
空き家の種類別・建て方別の空き家数(2023年10月1日現在)
| 空き家の種類 | 空き家総数 | うち一戸建 |
|---|---|---|
| 賃貸用の空き家 | 443万6千戸 | 21万3千戸 |
| 売却用の空き家 | 32万6千戸 | 19万1千戸 |
| 二次的住宅(別荘など) | 38万4千戸 | 26万9千戸 |
| 賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家 | 385万6千戸 | 285万1千戸 |
| 総数 | 900万2千戸 | 352万3千戸 |
出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」表2-1・表2-2(2026年10月17日確認)。千戸未満を四捨五入しているため、内訳の合計は総数と一致しない場合があります。
売却用の空き家は32万6千戸(空き家全体の3.6%)にとどまり、そのうち一戸建は19万1千戸です。空き家の半分以上にあたる502万9千戸(55.9%)は共同住宅の住戸で、その約8割が賃貸用です。「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や、建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅などで、種類の判断が困難な住宅も含みます。なお、いわゆる「廃屋」はこの調査では住宅に数えていません。空き家数は調査のたびに増え、1993年447万6千戸、2003年659万3千戸、2018年848万9千戸、2023年900万2千戸と、20年で37%増、30年で約2倍になりました。当サイトが掲載している売り出し中の一戸建の最新件数と、掲載元の再確認方法は掲載確認の件数のページで公開しています。こちらは空き家の数ではなく、掲載物件の数です。
なぜこれほど空くのか
3つの力が重なっています。
- 人口動態: 地方の過疎。年1〜3%人口を失う町は多く、住宅は人と一緒に動きません。
- 相続のもつれ: 多くの空き家は相続中で停止しています。兄弟間で意見が割れ、修繕でもめ、売却に至りません。
- 税制のインセンティブ: 2023年の改正以前、空き家を解体すると土地の固定資産税が最大6倍になりました。建てたまま放置するほうが安かったのです。
空き家バンクの実態
多くの自治体が空き家バンクを運営し、購入または(稀に)無償譲渡可能な物件を掲載しています。「無料の家」にはほぼ必ず条件が付きます。
- 自己居住用に限定(転売・賃貸不可)
- 数年単位の居住義務
- リフォーム費用のコミット(500万円以上のことも)
- 自治会、雪かき等の地域参加
掲載物件は新潟、秋田、鳥取、九州奥地など地方が中心で、東京や大阪の中心部にはありません。
隠れたコスト
安い購入価格の裏に本当の支出が隠れています。100万円の空き家には次のような工事が必要になりがちです。
- 構造調査: 10〜30万円
- 基礎・耐震補強: 200〜800万円(1981年以前の建物はほぼ必須)
- 屋根葺き替え: 150〜300万円
- 配管・電気: 150〜400万円
- 浄化槽: 100〜200万円(下水未整備地域)
- 断熱改修: 100〜300万円
100万円の家+1500万円の工事は、過疎地に建つ1600万円の家です。別荘や古民家プロジェクトとしては成立しても、「無料不動産」というフレームは合いません。
空き家が成立するケース
- 古民家リノベーション自体が目的(取引としてではなく)
- 仕事や家族の都合でその町に住む
- 観光ニッチを狙う(京都、軽井沢、ニセコ)
都市部の検索には空き家バンクは合いません。東京・大阪・福岡などの主要都市では、通常の物件検索が引き続き投資対象の中心です。