火災保険と地震保険:補償される範囲と、されない範囲

保険は、金融機関に勧められたものにそのまま署名し、何かが起きてから中身を知る、という扱いになりがちな部分です。ただ、日本の住宅保険には直感に反する仕組みが2つあるので、決済前に30分だけ見ておく価値があります。

火災保険は火事以外もかなり補償する

火災保険は基本となる契約で、融資を受けるなら実質必須です。名称と違い、標準的な契約では次のような損害がまとめて対象になります。

一方、任意になっていることが多いのが水災補償です。保険料を下げるために外されやすく、そして台風被害を個人の経済的な事件に変えるのがこの部分です。付けるべきかどうかは好みの問題ではなく、その土地がどこにあるかで決まります。

保険を見る前にハザードマップを見る

各自治体が公表しているハザードマップには、洪水浸水想定、高潮、土砂災害、沿岸部では津波の浸水深が示されています。無料で、公開されていて、番地単位で読めます。

見るタイミングは、保険契約の前ではなく、買付を入れる前です。水災補償が必要か、保険料がどのあたりになるか、そもそもその物件を選ぶかどうか。3つが同時にわかります。内見チェックリストに建物の確認と並べて入れてください。

2020年以降、水害リスクの説明は重要事項説明の項目になっているため、仲介会社は必ず触れます。ただしそれは契約直前の段階で、浸水想定3mの土地だと知るには遅すぎます。

地震保険は単独では入れず、建て直す保険でもない

ここが一番誤解されている点です。

地震保険は単独契約できません。火災保険に付帯する形でのみ加入します。そして火災保険は、地震による損害を免責しています。地震を原因とする火災も、津波による損害も対象外です。付帯しなければ、地震の損害は無保険ということになります。

仕組みを決めているルールが2つあります。

保険金額は火災保険の30〜50%の範囲で設定し、建物・家財それぞれに法定の上限があります。全額を補償しない設計は意図的なもので、政府が再保険で支える制度として、元通りに再建することではなく、生活の再建に着手できることを目的にしています。

支払いは損害の程度による定額方式です。全損・大半損・小半損・一部損の区分に判定され、区分ごとに保険金額の一定割合が支払われます。個別の修繕費を積み上げる交渉はありません。大災害の後でも支払いが早いのはこの設計のおかげで、同時に、受け取る金額と修繕見積もりが一致しない理由でもあります。

制度が全国共通のため、基本的な条件と保険料は保険会社によって変わりません。保険料が変わるのは都道府県構造(木造か非木造か)です。リスクの高い都道府県の木造住宅は、料率表の高いほうの端に位置します。

割引は必ず申請してください。耐震等級、免震建築物、建築年による割引があります。1981年以降の新耐震基準に適合する物件なら、その旨を保険会社に伝えてください。

築古の木造は保険料が上がり、断られることもある

空き家や古家を検討しているなら、保険料は端数ではなく独立した費用項目として見積もってください。木造、築年数、茅葺きや特殊な屋根はいずれも保険料を押し上げますし、引き受け自体を断られる場合もあります。長く空き家だった物件では、契約前に引き受け可否を確認してください。保険が付けられない物件は、将来の売却でも同じ壁に当たります。

実務上のポイント

まとめ

火災保険には入る。水災補償が必要な土地かどうかを真剣に検討する。ハザードマップは物件を気に入る前に見る。特段の理由がなければ地震保険を付帯し、そのうえで、支払われるのは再建費用ではなく区分ごとの定額だと理解しておく。

日本の住宅保険は、補償範囲に対して高くはありません。高くつくのは、標準的な契約で「この国で実際に起きる2つのこと」がすでに補償されていると思い込むことのほうです。